私のお気に入り
この時計は、私が結婚して、本格的に働き出したとき
自分にごほうびに買ったものです。
夫の両親とはじめから同居だった私は
新婚の頃は両親も働いていたので
家でのんびりお留守番できたのですが
義母の会社が不景気のあおりで工場閉鎖に
なってしまい、事態はかわっていきました。
働き者の義母ははじめは自分が働きに出る
つもりで、色々探し始めましたが、
年齢的なこともありなかなか次は見つかりませんでした。
ひとつの家のなかに主婦は二人は、いらない。
私は近くにオープンしたファーストフード店で
パートとして働き始めました。
はじめは戸惑うことばかり。何年も仕事をして
いなかったので要領も悪く店長にはいつも怒られて。
そのうちに、資格を取ってそれを活かして働こう
と思うようになりました。
パートの合間をぬって、医療事務の講座を受けに
電車にのって勉強にいく日々が始まりました。
約半年の勉強が終わり、いよいよ資格試験。
久しく「試験」なんて受けたことなかったので
同期の仲間と励まし合い、なんとか無事に合格
することができました。
そして、働く先を紹介してもらい、契約を交わして
その帰り道でこれを買ったのです。
自動巻きなので、電池がいらないのが好きです。
文字盤の色もうすい水色ですてきでしょ?
ふちにカットが施されたガラス面は、太陽の光で
様々に反射して、サンキャッチャーさながらの
美しさなのです。
車を運転していると、この時計に反射した光が
車内にうつり、当時ちいさかった子供たちは
大喜びしていましたっけ。
今、私は別のところで正職員として働かせて
もらっています。
あのとき選んだ道は、その後形を変えながらも
私をずっと支えてくれています。
苦楽を共にしてきた、お気に入りの時計の話でした。
お読みくださってありがとうございました。